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トスアップ営業とは・意味とISとFSの線引き・受注につなげる13の手順と5つの失敗

トスアップ営業の意味から、ISとFSの線引き、受注につなげる渡し方と失敗まで解説します。

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本記事を読むと分かること

・トスアップ営業の意味と、ISとFSで受け持ちを分ける線引き
・受注につながる案件を渡すための13の手順と、よくある5つの失敗
・トスアップの成果を測る5つの指標と、振り返りを回すコツ

現場の営業担当者だけでなく、営業責任者必見の内容です。
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トスアップ営業とは・意味と押さえたい3つの基本

意味:案件を次の担当へつなぐ

トスアップとは、営業のどんな動きを指すのか。
一言でいえば、見込み客との商談の機会を、確度を確かめたうえで次の担当者へつなぐ動きです。
名前の由来はバレーボールのトスで、味方が打ちやすい球を上げて攻撃を任せる動きにたとえています。
アポを渡しても商談が前に進まず、何が足りないのか見えないまま悩む方も多くいます。
多くの会社では、IS(インサイドセールス:電話やメールで見込み客と接点を持つ担当)が渡す側です。
受け取る側は、FS(フィールドセールス:商談と提案を受け持つ担当)が中心になります。
単なるアポの受け渡しと違うのは、日時だけでなく相手の状況や関心の高さまで一緒に渡す点です。
受け取った担当者が商談の続きから話せるよう、渡すものは先にそろえておきます。

・見込み客の情報:会社名と担当者、抱えている課題
・温度感:導入への関心の高さと、検討がどこまで進んでいるか
・次にやること:次の商談で確かめる点と、相手と約束した期日

3つのうち1つでも欠けると、受け取った担当者は相手に同じ質問を繰り返すしかありません。
こうした渡し方は、ISからFSへの場面に限らず、営業の分業のあちこちで使われる考え方です。

場面:IS・FS・CSの間で使う

トスアップは、ISからFSへの受け渡しだけを指す言葉ではありません。
マーケティング部門からISへ、FSからCS(カスタマーサクセス:契約後の活用を支える担当)へ渡す場面でも使われます。
担当が分かれるほど、どこで何を渡すのかが見えにくくなるのは自然なことです。
1人の営業が見込み客探しから契約後まで持つなら、渡す場面はそもそも生まれません。
しかし集める人、商談する人、契約後を支える人と分業が進むほど、渡す回数もそれだけ増えます。
本記事で中心に扱うのは、受注に直結するISからFSへの場面です。

渡す側→受ける側

渡すタイミング

主に渡す情報

マーケティング→IS

資料請求やセミナー参加など、見込み客から反応があったとき

反応した内容、見た資料、問い合わせの文面

IS→FS

渡す条件を満たし、商談の日程が決まったとき

課題、検討時期と予算、決裁ルート、温度感

FS→CS

契約が決まり、導入の準備に入るとき

契約の内容、導入で目指すこと、商談中の約束

どの場面でも、前の担当が聞いた話を次の担当が聞き直さずに済むかどうかが成否を分けます。
場面ごとに渡す情報は違っても、何のために渡すのかという目的は共通しています。

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目的:受注の確度を上げて渡す

トスアップの目的は、渡す件数を増やすことではなく、受注につながる商談を渡すことです。
確度を上げてから渡すほど、FSの限られた時間は見込みの高い商談に使われます。
アポ数の目標に追われていると、まず件数を確保したくなる気持ちはよくわかります。
ところが件数を目的にすると、関心の薄い相手との商談にもFSの時間が割かれるのが実情です。
その結果、本当に検討が進んでいる見込み客への対応が後回しになる、という逆転が起きます。
目的は大きく3つに分けて押さえておくと、日々の判断がぶれません。

・FSの時間を、受注の確度が高い商談に集中させる
・見込み客に、同じ質問を何度も繰り返させない
・受注や失注の理由を、渡す側のISへ戻して次に生かす

3つ目の目的まで含めて見ると、トスアップは一度きりの受け渡しではなく、渡す質を上げ続ける仕組みです。
受注につながる商談を渡すという目的は、営業の分業が欠かせない理由とも深く結びついています。

トスアップ営業が欠かせない3つの理由

理由①:受注までの時間を縮める

関心が高いうちにFSへ渡せば、見込み客の検討が止まる前に商談を始められます。
トスアップが受注までの時間を縮めるのは、相手の関心が最も高い時期を逃さずに済むからです。
問い合わせへの初回連絡が遅れて、相手の熱が冷めてしまう場面はどの現場にも見られます。
1人の担当者が見込み客探しから商談まで抱えると、目の前の商談が優先され、次の接点が遅れがちです。
一方、ISが初回の接点を持ち、条件がそろった時点でFSへ渡せば、待ち時間を短くできる点が大きな違いです。
たとえば資料請求の翌週に初回商談が入る流れと、1か月後に入る流れを比べてみます。
翌週なら資料の内容が相手の記憶に残っており、課題の話からすぐに始められます。
1か月後になると、相手が他社の検討を始めていたり、社内の優先順位が変わっていたりするのが普通です。
渡すまでの日数の差は、そのまま商談の入り方の差になるわけです。
渡す日数を縮めることは、FSの腕前に頼らずに受注までの期間を短くする手段として働きます。
受注までの時間を縮める効果は、FSが商談そのものに使える時間を増やす効果と表裏一体です。

理由②:FSが商談に集中できる

商談の前段にある作業をISが受け持てば、FSは提案の中身を磨くことに時間を使えます。
FSが商談に集中できる環境は、こうした役割の分担によって初めて整います。
架電や日程調整に追われ、提案の準備が夜にずれ込む状況は、FSにとって避けたいものです。
FSがリストづくりや架電まで抱えると、商談の準備に使える時間はどうしても削られます。
ただしISの仕事は作業の肩代わりではなく、見込み客の状況を最初に見極めて、商談に進める相手かを判断する役割です。
FSが手放せる作業は、主に次の3つです。

・リストづくり:狙う業種や規模に合う会社を選び、連絡先をそろえる
・初回の架電とメール:関心の有無と、今抱えている課題を確かめる
・日程調整:FSの空き枠に合わせて、商談の日時を相手と決める

手放した時間を準備に回せると、FSは1件ごとの提案に相手固有の課題を盛り込めます。
FSが商談に集中できる体制は、見込み客を取りこぼさないための土台の役目も果たします。

理由③:見込み客を取りこぼさない

FSが手一杯の時期でも見込み客への連絡が途切れないのは、トスアップの仕組みがあるからです。
特に検討の初期にいる見込み客は、FSの優先順位では後回しにされてしまいます。
後で連絡しようと思った相手が、半年後に他社と契約していたと知るのはつらい経験です。
見込み客を取りこぼさない役目をISが持てば、時期が合わない相手にも連絡を続けられます。
「今は時期でない」と言われた相手は、検討の時期を聞いたうえでISが追い続ける対象に回します。

取りこぼす場面

起きること

トスアップで防げること

資料請求の後に連絡がない

相手が他社の資料も取り寄せ、比べ始める

ISが早めに初回連絡を入れ、課題を聞き取ってからFSへ渡す

「今は時期でない」と言われた

連絡が止まり、検討が始まったときに声がかからない

ISが検討時期を聞き、その時期の前に連絡を入れ直す

相手の担当者が異動した

窓口がいなくなり、案件ごと消えてしまう

ISが後任の担当者を確かめ、改めて関係をつくる

取りこぼしが減れば、同じ数の問い合わせからでも、商談に進む件数は増える計算です。
ただし取りこぼしを防ぐには、ISとFSのどちらが何を受け持つのか、境目を先に決めておく必要があります。

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トスアップ営業で決めるISとFSの線引き5項目

線引き①:ISが受け持つ範囲を決める

ISの仕事は、見込み客を選ぶところから、FSとの商談日が決まるところまでを目安に区切ります。
範囲を言葉にしておかないと起きるのが、ISとFSが同じ相手に別々に連絡してしまう事故です。
同じ会社に2人から電話が入り、相手に不信感を持たれるのは避けたい事態です。
ISが受け持つ範囲は、狙う相手を決める段階から、見込みを管理する段階までの流れで考えると漏れが出ません。
範囲の中で何をどこまでやるかは、商談の結果を見ながら少しずつ直すのが現実的です。

・ターゲットとリストづくり:狙う業種と規模を決め、連絡する会社を選ぶ
・初回接触:電話やメールで最初の接点を持ち、関心の有無を確かめる
・ヒアリング:課題、検討時期、決裁ルートを会話の中で聞き取る
・日程調整:渡す条件を満たした相手と、FSとの商談日を決める

範囲を書面にして共有しておくと、新しく入ったISも同じ線に沿って動けます。
ISの範囲が決まれば、残る仕事をFSがどこまで受け持つのかも決めやすくなります。

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線引き②:FSが受け持つ範囲を決める

FSの範囲には、商談を受け取ってからの仕事だけでなく、ISへ返すものまで含めるのが筋です。
返すものが決まっていないと、渡した案件がどうなったのかISからは見えません。
渡した案件の行方がわからないまま、次のアポを取り続けるのは張り合いのない仕事です。
とくに商談前の準備では、顧客情報と想定される課題、商談の着地点をそろえておくと、商談の質が安定します。
商談の後は、次にやることを日付付きで決め、結果をISへ戻すところまでがFSの仕事です。

FSが受け持つ仕事

やり方の例

ISに戻すもの

商談前の準備

引き継ぎシートを読み、顧客情報と想定される課題、着地点を確かめる

足りない情報があれば、商談前に追加で聞いてほしい点

商談と提案

課題を深く聞き、解決の道筋と提案の内容を示す

商談で新しくわかった課題や決裁の流れ

結果の連絡

次にやることを日付付きで決め、記録に残す

結果(次に進む/保留/失注)とその理由

戻すものまで決めておくと、ISは自分の渡した案件の質を、結果と理由の両方から振り返れます。
お互いの範囲が決まったら、次に詰めるのは2つの範囲の境目、つまり渡すタイミングです。

線引き③:渡すタイミングを決める

渡すタイミングは「アポが取れた時点」ではなく、「渡す条件を満たした時点」で決めます。

アポの日時が決まったことと、FSが商談で成果を出せる状態になったことは別の話です。
早く渡して件数を稼ぎたい気持ちと、FSに迷惑をかけたくない気持ちの間で揺れるのは、ISリーダーならではの悩みです。
早すぎると温度の低い案件が混ざり、FSが商談の場で一から関係をつくり直すことになります。
遅すぎても、今度は関心が冷めるのが難点です。
たとえば「予算を組む時期と、導入を決める人までの流れが聞けた時点で渡す」と決めておく方法があります。
この決め方なら、ISもFSも同じ物差しで、渡すかどうかを判断できます。
渡す条件そのものの作り方は会社ごとに違うため、ここではタイミングを条件に結びつける点を押さえてください。
タイミングを条件で決めると、ISの「早く渡したい」とFSの「準備できた案件がほしい」がぶつからなくなります。
タイミングの線が引けたら、渡した後の商談にISがどこまで関わるのかも決めておきます。

線引き④:商談に同席するか決める

ISが商談に同席するかどうかを決める基準は、商材の単価と商談の長さの2つです。
同席の形を決めずにいると、見込み客は担当が急に替わったことに戸惑います。
同席するかを毎回その場で決めていると、IS自身の予定も組みにくくなるのが悩みどころです。
どの形が正解ということはなく、単価が高く商談が長い商材ほど、ISが関わる場面を増やすのが基本です。
一方、単価が低く1回の商談で決まりやすい商材では、同席がかえってFSの進行を妨げることもあります。

同席の形

向いている場面

注意点

同席しない

単価が低く、1回の商談で決まりやすい商材

渡す前に、担当が替わることを相手に伝えておく

初回だけ同席する

ISとの会話で、相手が課題を詳しく話してくれた案件

冒頭でISからFSへ話を渡し、途中からは口を挟まない

最後まで同席する

単価が高く、商談が何回も続く商材

ISとFSの役割を事前に決め、相手に同じことを2回聞かない

同席の形を商材ごとに決めておけば、ISの予定にも商談の進め方にも迷いがなくなります。
同席まで決めたら、最後に残るのは、渡された案件をFSが受け取らないときの扱いです。

線引き⑤:差し戻す条件を決める

差し戻しとは、FSが受け取った案件を「まだ商談に進めない」とISへ返すことです。
差し戻す条件を前もって言葉にしておかないと、FSが「使えない」と言うだけで終わってしまいます。
理由を言われずに案件を突き返されると、IS側は責められたように感じるものです。
差し戻しはISへの罰ではありません。
渡す条件を直すための材料として扱います。
条件の細かな作り方は商材によって変わるため、まずはよく起きる差し戻しの理由から言葉にするのが近道です。

・決裁ルートがわからない:導入を決める人と、決まるまでの流れが聞けていない
・検討時期が決まっていない:いつ導入したいのかを、相手がまだ答えられていない
・聞き取り項目が埋まっていない:引き継ぎシートの必須項目に空欄が残っている

差し戻す条件が決まっていれば、FSは理由を添えて返し、ISはその理由を次の聞き取りに生かせます。
5つの線が引けたら、いよいよ実際に案件を渡す手順に移ります。

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トスアップ営業の13の手順

〈渡す前の準備〉

手順1:渡す条件を有効商談とそろえる

ISが渡す条件は、FSが「有効商談」と呼ぶ基準と同じ物差しにそろえておくことが前提です。

有効商談とは、受注に向けて商談を進める価値があると社内で認めた案件のことです。
ISは条件どおりに渡したつもりでも、FSには物足りなく映る食い違いはよく起きます。
意味がずれたまま渡すと、どの案件も差し戻しの対象になり、ISとFSの間に不満がたまります。
たとえばISは「話を聞いてくれた」ことを条件に渡し、FSは「予算がある」ことを求めていた場面です。
この場合、ISがどれだけ件数を積み上げても、FSから見れば条件を満たさない案件ばかりが届きます。
そろえる作業は一度で終わらず、商談の結果を見ながら条件を直し続けるのが基本です。
渡す情報の細かさや温度感の書き方も、このときISとFSで具体的に合わせておきます。
物差しが1つになれば、差し戻しは「感覚の違い」ではなく「条件の不足」として話し合えます。
そろえた条件を毎回同じ形で渡すために、次に用意するのが引き継ぎシートです。

手順2:引き継ぎシートを用意する

引き継ぎシートは、ISが聞き取った内容を確定した項目でFSへ渡すための書式です。
口頭やチャットだけで渡すと、FSが同じ質問を相手に繰り返す原因を作ります。
「前の方にもお話ししましたが」と相手に言わせてしまうのは、営業として苦しい場面です。
項目を増やしすぎるとISが埋めきれず、空欄のまま渡るため、最初は4項目ほどから始めます。
なお、同じ会社の中で他の部署へ顧客の個人データを渡すことは、個人情報保護法の「第三者提供」には当たらないとされています。
ただし、最初に決めた利用目的の範囲を超えて使う場合は、あらかじめ本人の同意が必要です。
(参考:個人情報保護委員会)

シートの項目

書く内容

書き方の例

会社と担当者

会社名、部署、担当者の名前と役職

営業企画部の部長で、営業の仕組みづくりを任されている

課題

相手が自分の言葉で話した困りごと

「ISとFSの引き継ぎで情報が抜ける」と話していた

検討時期と予算

いつまでに決めたいか、予算を組む時期

来期の4月導入を目指し、予算は1月に組む予定

温度感と次にやること

関心の高さを一言で、次の商談で確かめること

導入に前向き。商談では費用の比べ方を聞きたいと話していた

シートの形が決まると、誰が渡しても、FSが受け取る情報の抜けが減ります。
ただしシートを書いても、知らせ方が決まっていなければ、FSが気づかないまま案件が止まります。

手順3:渡す連絡の流れを決める

シートを書き終えた後に決めたいのは、どこで知らせ、誰が受け取ったと返すかまでの一連の流れです。
流れが決まっていないと、渡した連絡がFSに読まれないまま止まってしまいます。
渡したつもりの案件を、数日後に「聞いていない」と言われるのはISにとって痛手です。
知らせる場所は、SFA(営業支援システム:商談の記録を共有する仕組み)の担当変更か、チャットの専用の場所に絞ります。
場所が1か所に決まっていれば、FSは毎朝そこだけを見れば渡された案件を確かめられます。

①シートを記入し、空欄がないかをISが見直す
②決めた場所(SFAの担当変更やチャットの専用の場所)でFSに知らせる
③FSが受け取ったことを返信する
④期限までに返事がなければ、ISからFSに確かめる

受け取ったという返信を流れに入れることが、案件を宙に浮かせないための一番の手当てです。
連絡の流れが整っても、受け取るFSの予定が埋まっていれば商談は先送りになります。

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手順4:FSの受け入れ枠を確かめる

渡す前に、FSが新しい商談を受け入れる余裕を持っているかを確かめます。
予定が埋まったFSに渡せば商談の日程は先へずれ、その間に相手の関心も下がる一方です。
条件を満たした案件をFSの都合で何週間も待たせれば、せっかくの機会を逃しかねません。
受け入れ枠は、空いている日時だけでなく、担当できる業種や同時に持てる商談の数まで見ておくと確実です。
枠が足りないときは、ISが渡す順番を入れ替えたり、別のFSに相談したりして調整します。

確かめる項目

確かめ方

足りないときの対応

今週と来週の空き枠

FSの予定表を見て、商談を入れられる時間帯を確かめる

別のFSに回すか、相手に候補日を広めに出す

担当する業種や規模

業種や会社の規模ごとの担当分けを確かめる

担当外なら、その業種を受け持つFSへ渡す

同時に持てる商談数

FSが今抱えている商談の数を、本人に確かめる

上限に近ければ、確度の高い案件から順に渡す

枠を確かめてから渡す習慣があると、FSも受けきれない案件を押しつけられたと感じずに済みます。
受け入れる側の準備が整えば、残るのは見込み客との会話で渡す材料を集める段階です。


〈見込み客との接点〉

手順5:有効商談の項目を聞き取る

FSとそろえた有効商談の条件は、見込み客との会話の中で1つずつ聞き取って埋めます。
聞き取る項目が決まっていれば、受注につながる案件かどうかを渡す前に見分けられる点が利点です。
質問攻めのようになって、相手に警戒されないかと心配になる方もいます。
項目は問い詰めるのではなく、相手の困りごとを聞く流れの中で自然に尋ねるのがコツです。
とくに決裁ルートは、担当者の名前と役職まで聞いておくと、FSが商談に呼ぶ相手を決めやすくなります。

・課題:「今いちばん困っていることは何ですか」と、相手の言葉で聞く
・予算の時期:「こうした費用は、いつごろ予算に組まれますか」と時期を聞く
・決裁ルート:「導入を決めるとき、どなたが関わりますか」と名前と役職を聞く
・検討の期限:「いつごろまでに形にしたいですか」と目標の時期を聞く

4つが埋まった案件なら、FSは商談の冒頭から提案の話に入れます。
ただし項目が埋まっていても、相手がどれほど前向きなのかまでは、文字だけで伝わらないのが難しさです。

手順6:温度感を一言で書き残す

温度感とは、相手が導入にどれだけ前向きかという関心の高さのことです。
項目だけでは伝わらないため、ISが会話で感じた様子を一言で書き残します。
同じ「検討中」でも、熱心に質問してくる相手と生返事の相手では、中身はまったくの別物です。
温度感の書き方をISとFSでそろえておくと、受け取った側が商談の入り方を決めやすくなります。
下の表の段階の名前は一例で、自社で使いやすい呼び方に変えて構いません。
大切なのは、言葉の意味をそろえることです。

温度感の段階

書き残す一言の例

FSの動き

高い

「来月の会議で比べたい」と、相手から資料を求められた

早めに商談を入れ、提案の準備を進める

中くらい

関心はあるが、社内で話し合うのはこれから

課題を深く聞き、社内で話を進める材料を渡す

低い

情報収集の段階で、時期は未定と話していた

渡さずにISへ戻し、時期を見て連絡してもらう

一言の記録が積み重なると、どんな話しぶりの相手が受注に近いのかも見えてきます。
温度感が中くらいのまま渡すのが不安なときは、FSに渡す前にもう一度話す場をつくる方法があります。

手順7:一次商談で確度を上げる

FSに渡す前に、もう一度話す場を設ける意味はどこにあるのか。
答えは、相手の必要性を確かめてから渡すことで、FSの商談が空振りに終わるのを防げる点にあります。
一次商談とは、ISが短い時間で相手の課題と検討状況を確かめるための場です。
渡した商談でFSが「まだそんな段階ではなかった」と肩を落とす姿は、見ていてつらい光景です。
一次商談を挟むと、FSの商談に進む案件の数は減りますが、1件ごとの確度は上がります。
しかし長く時間をかけすぎると、相手に同じ話を2回させる負担になる点には注意が必要です。

①一次商談の目的を相手に伝える(「課題を整理し、次回の提案に生かすための時間です」など)
②課題と検討状況を確かめる
③FSの商談で話す内容を、相手と合意する
④確かめた確度を書き残して、FSへ渡す

一次商談で合意した内容を持って渡せば、FSの商談は相手が期待した話から始められます。
合意ができたら、その場で次の担当者が誰になるのかも相手に伝えておきます。

手順8:次の担当者を相手に伝える

担当が替わると先に伝えておく狙いは、見込み客に同じ話を繰り返す不安を持たせないことです。
次の担当者を相手に伝えるのは、ISからFSへの切り替えを相手にとって自然な流れにするためです。
何の説明もなく別の人から連絡が来ると、相手は「話が伝わっていないのでは」と身構えます。
伝えるときは、次の担当者の名前と役割、聞いた内容を引き継いでいることの3点をそろえます。
たとえば「次回は提案の担当〇〇が、今日の内容を踏まえてご説明します」と一言添える方法です。
この一言があるだけで、相手は前回の続きから話せると受け止めます。
反対に「担当が忙しいので」のような理由で替わると伝えるのは、後回しにされた印象を与えるため避けたい言い方です。
切り替えを丁寧に伝えた案件ほど、FSの初回商談は相手との関係ができた状態で始まります。
相手に伝えた内容は、FSや後の担当者も読めるよう、商談情報と一緒に記録へ残します。

手順9:商談情報をSFAに記録する

商談の内容と温度感、次にやることは、その日のうちにSFAへ記録するのが原則です。
記録がSFAにないと、渡した後の結果を数えることも、振り返ることもできません。
忙しい日ほど記録が後回しになるのは、どの現場でも同じです。
2022年版中小企業白書では、セールス分野のITツールを導入している中小企業は約4割とされています。
(参考:中小企業庁「2022年版 中小企業白書」)
2024年版中小企業白書は、顧客データの一元管理と営業活動のオンライン化を取り上げています。
DXの取り組みが進んだ企業とそうでない企業の間で、取り組む割合の差が大きいとされる項目です。
(参考:中小企業庁「2024年版 中小企業白書」)
ツールを入れているかどうかより、記録する項目とタイミングを決めているかが分かれ目です。

記録する項目

記録するタイミング

後で使う場面

商談の内容

一次商談やヒアリングを終えた当日

FSが商談前に読み、聞き直しを防ぐ

温度感

渡す直前に、最新の様子に書き直す

差し戻しや失注の理由を振り返るとき

次にやることと期日

相手と次の約束をしたその場

期日を過ぎた案件を見つけ、連絡を入れるとき

同じ場所に記録がそろうと、成果を測る数字もSFAから集められます。
記録を終えたら、渡す前の最後の仕事は商談の日程決めです。

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手順10:日程調整まで済ませて渡す

ISは商談の日時まで決めてから、案件をFSへ渡します。

日程が決まらないまま渡すと、FSからの連絡を待つ間に相手の関心が下がります。
日程のやり取りが何往復も続き、その間に相手の返事が途絶えるのはよくある話です。
ISが日程まで決めておけば、FSは受け取ったその日から商談の準備に入れます。
候補日はFSの空き枠から複数出し、相手が選びやすい形にしておくと、やり取りの回数が減ります。

①FSの空き枠を確かめる
②相手に候補日を複数出す
③会議の案内を送り、FSも参加者に入れる
④前日に確認の連絡を入れる

日程まで決めて渡す形なら、渡してから商談までの日数も短く保てるのが利点です。
ここで渡す作業は終わりですが、トスアップの成果を左右するのは渡した後の動きです。

〈渡した後のフォロー〉

手順11:商談前に仮説をすり合わせる

商談の前に、ISとFSで相手の課題についての仮説を短時間ですり合わせます。
シートを渡しただけでは、FSが文字の行間を読めず、課題を読み違えることがあるからです。
書いたつもりの温度感が、FSには違う意味で伝わっていたという行き違いはよく起きます。
すり合わせは長い会議でなくてよく、商談の前日に短く話すだけでも十分です。
話す内容は、顧客情報と想定される課題、商談の着地点の3つにそろえると、毎回の準備がぶれません。

すり合わせる項目

ISが出すもの

FSが決めること

顧客情報

会社の状況と、話した担当者の立場

商談に誰を呼ぶか、誰に向けて話すか

想定される課題

相手が話した困りごとと、その背景

提案で最初に触れる課題

商談の着地点

相手が次の商談で知りたいと言っていたこと

商談の終わりに相手と決めたい次の約束

着地点を先に決めて臨むと、商談が雑談で終わらず、次にやることが必ず残ります。
想定される課題等もすり合わせておくことでより明確になります。
次にやることが残る商談であれば、当日のうちにISへ結果を戻すのも簡単です。

手順12:商談結果を当日中に戻す

FSは商談を終えたら、その日のうちに結果と次の約束をまとめ、渡してくれたISへ戻します。
結果が戻らないと、ISは自分が渡した案件の良し悪しを判断できません。
渡した案件の結果を、数週間後に人づてで知るのはやる気がそがれる出来事です。
当日中にこだわるのは、時間がたつほど相手の表情や言葉の細かな様子が、FSの記憶から抜け落ちるためです。
戻す内容は、結果と次の約束、差し戻すならその理由までを1つの流れで記録すると漏れません。

①結果(次に進む/保留/失注)を記録する
②次にやることを日付付きで決める
③記録したことをISに知らせる
④差し戻すときは、その理由を書き添える

結果が毎回同じ形で戻ると、ISは渡した案件の行方を自分で追いかける手間がなくなります。
戻ってきた結果のうち、とくに受注と失注の理由は、次に渡す条件を直すための材料です。

手順13:勝ち負けの理由を条件に返す

受注と失注の理由を渡す条件に戻すと、次から渡す案件の質が上がります。
勝ち負けの理由には、どんな案件が受注に近いのかという答えが詰まっているからです。
失注の理由を振り返るのは気が重い作業ですが、避けて通ると同じ失注を繰り返します。
たとえば失注の理由に「決裁者が出てこない」が続いたら、決裁ルートの聞き取りを渡す条件に足します。
反対に、受注した案件で共通して聞けていた項目は、外せない条件として残す候補です。
条件を直したら、その日からISの聞き取りとシートにも反映し、古い条件で渡す人が出ないようにします。
理由を集める場には、振り返りの定例を使うのが続けやすい方法です。
理由を条件へ戻す流れが回り始めると、渡す手順そのものが自社に合った形へ育ちます。
反対に、ここまでの手順のどこかを飛ばすと、トスアップはよくある失敗にはまります。

トスアップ営業でよくある5つの失敗

失敗①:温度の低い案件を渡す

アポ数を急いだときに起きやすいのが、検討する気持ちが薄い案件までFSへ渡ってしまう事態です。
温度の低い案件を渡すと、FSの商談は情報提供で終わり、受注に向けた話に進めることが難しくなります。
月末が近づくと、少しでも件数を積み上げたくなるのは無理もない話です。
未然に防ぐには、受注につながるアポとは何かを、ISとFSで先に言葉にしておくことから始めます。
そのうえで、渡す前の確かめ方とタイミングを決めておけば、急いでいるときでも判断がぶれません。

課題

対処法の例

確かめるタイミング

関心はあるが、検討時期が未定

時期を聞き、その前に連絡し直す対象としてISが持ち続ける

初回の会話で検討時期を聞いたとき

課題がはっきりしない

一次商談で課題を整理してから渡す

FSに渡す前の一次商談

決める人がわからない

決裁ルートを聞き、担当者の名前まで確かめる

渡す条件を満たしたかを見直すとき

温度の低い案件をISが手元で育てる形にすることが、FSと相手の時間を無駄にしない手立てです。
温度の見極めと並んで起きやすいのが、見極めた内容が記録に残らない失敗です。

失敗②:情報が口頭だけで残らない

口頭だけの引き継ぎは、その場では早く見えても、後から誰も中身を確かめられません。
情報が口頭だけで残らないと、FSは商談の直前に記憶を頼りに準備するしかありません。
席が近いと、つい声をかけて済ませたくなるのは自然なことです。
しかし話した内容は、聞いた人の受け取り方で少しずつ形を変えます。
担当が休んだり替わったりしたとき、口頭の情報は誰にも引き継がれずに消えてしまうのが怖いところです。

・立ち話で渡す:シートに書いてから渡し、口頭は補足にとどめる
・チャットに流れる:やり取りの要点を、SFAの記録に移す
・担当の頭の中だけにある:温度感の一言を、渡す前に書き残す

記録に残す習慣があれば、FSが休んでも、別のFSが同じ情報で商談に入れます。
記録が残っていても、渡した後に誰も動かなければ、案件はそこで止まってしまいます。

失敗③:渡した後に放置される

渡した後に放置される案件の原因は、連絡の期限と、期限を過ぎたときに動く人が決まっていないことです。
期限がないと、商談が止まっても誰も気づきません。
渡した案件がいつの間にか失注扱いになっていたと知って、がっかりした経験を持つISもいます。
先に紹介した連絡の流れと、結果を当日中に戻す手順は、この放置を防ぐための仕組みです。
それでも放置が起きるなら、期限を過ぎた案件を見つける役目を誰が持つかまで決める必要があります。

課題

対処法の例

決めておくこと

FSが受け取ったまま連絡しない

受け取った返信を必須にし、返信がなければISが確かめる

返信の期限と、確かめる担当

商談後の結果が戻らない

結果をその日のうちに記録し、ISに知らせる

結果を戻す期限と、記録する場所

保留のまま次の連絡がない

次にやることを日付付きで残し、期日を過ぎたら知らせる

期日を過ぎた案件を見直す日

放置を見つける役目が決まると、止まった案件を早いうちに動かし直せます。
ただし案件を動かす仕組みが整っても、ISを評価する物差しが件数だけでは、渡す質は上がらないままです。

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失敗④:アポ数だけで評価する

アポ数は増えているのに、受注が増えないのはなぜか。
原因は、アポ数だけでISを評価すると、温度の低いアポを増やすほど評価が上がる仕組みになる点にあります。
評価の物差しが件数だけなら、ISが件数を優先するのは自然な動きです。
件数は目的ではありません。
渡す条件を厳しくするとアポ数が減り、自分の評価が下がるのではという不安も、現場ではよく聞かれます。
この不安を解く方法は、アポ数と並べて、渡した案件のうち受注まで進んだ割合を見ることです。
受注まで見る評価に変えると、ISは件数を追うだけでなく、相手の検討状況を深く聞くように動きが変わります。
アポ数は減っても、受注につながる案件が増えれば、ISの仕事の価値はむしろ数字で示しやすくなるのが利点です。
ただし受注率は、分母を渡した件数にするか有効商談の数にするかで値が変わるため、社内で1つに決めておきます。
評価を変える前の数字も、変化を比べる材料として残しておきたいところです。
受注まで見る評価なら、渡す条件を厳しくしてもISが損をしない点が強みです。
評価の物差しと同じく、引き継ぎシートの項目も、多ければよいわけではありません。

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失敗⑤:引き継ぎ項目が多すぎる

引き継ぎ項目を増やしすぎると、ISが埋めきれず、空欄だらけのシートがFSへ渡ります。
念のためと項目を足すほど、肝心の情報が埋もれて読まれなくなるのは皮肉な点です。
FSから「あれも知りたい」と言われるたびに、項目を足してきた現場は珍しくありません。
項目を選ぶ基準は、FSが商談の冒頭で実際に使うかどうかの1点に絞ると、足すか外すかで迷いません。
使わない項目は思い切って外し、必要なら商談の中でFSが聞く形に回すのが現実的です。

課題

対処法の例

残す項目の考え方

空欄のまま渡る

必須の項目を絞り、残りは任意にする

渡す条件に関わる項目だけを必須にする

書く時間がかかりすぎる

選ぶ形の欄を増やし、書く欄を減らす

温度感など、一言で書けるものは選ぶ形にする

FSが読まずに商談に入る

項目の並びを、商談で使う順にそろえる

FSが商談の冒頭で使う項目を先頭に置く

項目が絞られたシートは、ISが書く時間もFSが読む時間も短くしてくれます。
ここまでの失敗に早く気づくには、トスアップの成果を数字で測っておくことが近道です。

トスアップ営業の成果を測る5つの指標

指標①:渡した件数を記録する

すべての指標の土台になるのは、ISがFSへ渡した件数の記録です。
渡した件数があいまいだと、後から割合を出すときの分母が決まりません。
数えるだけなら簡単に見える指標ですが、数え方には落とし穴があります。
差し戻された案件を数に入れるか、渡した日と商談の日のどちらで数えるかで、同じ月でも件数は変わってしまうためです。
数え方を先にそろえておけば、担当者や月をまたいでも同じ物差しで比べられます。

・渡した日で数える:商談の日ではなく、FSへ渡した日を基準にする
・差し戻しも1件に入れる:戻ってきた案件も、渡した件数から外さない
・担当者ごとに分ける:誰が渡した案件かを、記録に必ず残す

件数の記録がそろえば、次に出す割合の計算がぶれなくなります。
渡した件数という分母が決まったら、次に見るのは、そのうち何件が有効商談になったかです。

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指標②:有効商談になった割合を見る

渡した案件のうち、有効商談になったのは何件なのか。
この問いに答えるのが、有効商談化率です。
有効商談化率は、有効商談になった件数を渡した件数で割って出します。
渡す条件が商談の現場で通用しているかを確かめる、もっとも直接の物差しになる指標です。
何を有効商談と呼ぶかは会社によって基準が違うため、自社の定義に沿って数えることが前提です。
割合が下がったときは、すぐに担当者を責めるのではなく、どこで食い違いが起きたかを探します。

数字の動き

考えられる原因

見直す場所

割合が下がった

渡す条件があいまいになり、温度の低い案件が混ざった

渡す条件と、条件を確かめる手順

担当者ごとに差が大きい

条件の受け取り方が、人によって違う

条件の言葉と、ロールプレイの内容

割合は高いが件数が少ない

条件が厳しすぎて、渡せる案件が絞られすぎた

条件のうち、外してもよい項目

割合と件数をセットで見れば、条件が甘すぎるのか厳しすぎるのかを見分けられます。
有効商談の先で、渡した案件がどこまで受注に結びついたかを見るのが、次の受注率です。

指標③:受注まで進んだ割合を見る

受注率は、トスアップの成果を最後の結果で確かめるための指標です。
ここでは受注率を、受注した件数を渡した件数で割った値として扱います。
アポ数より受注を見たいと考える営業責任者にとって、中心に置きたいのがこの指標です。
ただし分母を有効商談の数に変えると、同じ受注件数でも割合は高く出ます。
分母が違えば、別の数字です。
どちらの分母を使うかを社内で1つに決め、資料にも分母を書き添えるのが混乱を防ぐ基本です。
受注までは時間がかかるため、どの期間に渡した案件を数えるかも決めておかないと、月ごとの比べ方が崩れます。

・分母を社内で1つに決める:渡した件数か有効商談の数かを選び、分母が変われば数字も変わると共有する
・数える期間を決める:渡した月で区切り、受注が翌月以降でも渡した月に数える
・担当者ごとに分ける:ISとFSの組み合わせごとに見て、偏りを探す

分母と期間がそろえば、受注率の変化を渡し方の変化と結びつけて読めます。
受注に至らなかった案件のうち、FSから戻された案件こそ、渡し方を直すヒントの宝庫です。

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指標④:差し戻された件数を数える

差し戻された件数は、渡す条件とFSの期待がずれている場所を教えてくれる数字です。
差し戻しが多いと、ISもFSも同じ案件に二度手間をかけてしまいます。
差し戻されるたびに、ISが気まずい思いをするのも無理はありません。
件数だけでなく理由ごとに数えるのが、直すべき場所をはっきりさせるコツです。
差し戻し率として割合で見る場合は、分母を渡した件数にすると決めておけば、月ごとの変化を比べられます。

差し戻しの理由

数字の動き

見直す場所

情報が足りない

特定の項目の空欄が続く

引き継ぎシートの必須項目

検討の時期が先

検討時期の聞き取りが漏れている

渡す前の確かめ方

決める人が違う

担当者の名前まで確かめていない

決裁ルートの聞き方

理由ごとの件数が見えると、差し戻しを個人の失敗ではなく、仕組みの課題として扱えます。
差し戻しの理由と並んで、渡すまでに時間がかかりすぎていないかも、数字で確かめたい点です。

指標⑤:渡すまでの日数を測る

渡すまでの日数は、ISが案件を見つけてからFSへ渡すまでのスピードを示す数字です。
見込み客の関心は時間とともに冷めるため、渡すのが遅れるほど商談の温度は下がります。
丁寧に確かめているつもりが、気づけば1週間たっていたという場面は、どの現場でも起きがちです。
ただし日数だけを縮めようとすると、確かめる手順を飛ばして温度の低い案件を渡すおそれがあります。
日数は有効商談化率と並べて見ることで、速さと質の両方を保てているかを判断できます。

・数え始める日を決める:最初に話した日か、渡す条件を満たした日かを、社内で1つに決める
・中央の値も見る:極端に長い案件に引っ張られないよう、平均だけでなく真ん中の値も確かめる
・長くかかった案件の理由を見る:日数が長い案件だけを抜き出し、どこで止まったかを探す

日数の記録が残っていれば、止まりやすい工程を見つけて手を打つことも可能です。
5つの指標がそろっても、数字を見て直す場が無ければ、トスアップの質は変わりません。

トスアップ営業の振り返りを回す5つのコツ

コツ①:週1回の定例で結果を共有する

振り返りを続けるには、ISとFSが同じ場で結果を見る時間を、週1回の定例として先に押さえておくことが第一歩です。
集まる日が決まっていないと、忙しい週ほど振り返りが後回しにされます。
定例と聞くと、会議が増えるだけではと身構える方もいます。
長く話す必要はなく、決まった項目だけを見て、次の週に直すことを1つ決めれば十分です。
毎週同じ項目を見ていれば、先週との違いにも気づけます。

定例で見る項目

例文

渡した件数と結果

「今週は何件渡し、そのうち何件が有効商談になりましたか」

差し戻しの理由

「戻ってきた案件は、どの項目が足りませんでしたか」

次週に直すこと

「来週は、どの確かめ方を1つ変えますか」

短い定例でも毎週続けば、ISとFSの間で小さなずれを早く直せます。
定例で差し戻しの理由が話題に上がったら、その案件を1件ずつ見直す時間も必要です。

コツ②:差し戻し案件を全件見直す

差し戻された案件は、件数を数えて終わりにせず、1件ずつ中身を見直します。
数字だけでは、なぜ戻ってきたのかまではわからないためです。
全件となると手間が多く、気が重くなるのが正直なところです。
ただし見るのは3つの点だけで、1件にかける時間は数分で足ります。
大切なのは、差し戻しの原因を誰が悪かったかで探すのではなく、どの手順で漏れたかで探す姿勢です。

・どの項目が欠けていたか:引き継ぎシートのどの欄が空いていたか、または食い違っていたか
・いつ欠けたか:初回の会話か、一次商談か、渡す直前かを確かめる
・誰の手で直せるか:ISの聞き方か、シートの項目か、FSとの取り決めかを分ける

漏れた手順が特定できれば、同じ理由の差し戻しを次の週から減らせます。
1件ずつの見直しで見えた傾向は、月単位の数字で比べると、さらにはっきりします。

コツ③:指標の変化を月1回比べる

指標は週ごとだと細かく揺れるため、傾向をつかむには月1回の比較が適切です。
比べる相手には、ほかの会社の数字ではなく、自社の先月や前の期の数字を選びます。
数字が下がった月は、原因探しより先に焦りが出がちです。
1か月だけの上下で判断を急がず、2か月から3か月続いたときに手を打つと決めておくと落ち着いて対応できます。
変化を見たら、どの手順を変えた時期と重なるかを確かめると、原因を絞り込めます。

比べる指標

見方の例

変化があったときの動き

有効商談化率

渡す条件を変えた月の前後で比べる

下がり続けたら、条件の言葉を見直す

受注率

渡した月ごとに、同じ分母で比べる

下がり続けたら、FSとの引き継ぎ内容を確かめる

差し戻しの件数

理由ごとに、先月と比べる

同じ理由が増えたら、シートの項目を直す

変えた手順の効き目を確かめる物差しは、ほかの会社ではなく自社の過去の数字です。
数字が良くなった月には、何がうまくいったのかを型として残すことが次の一手です。

コツ④:うまくいった渡し方を型にする

受注まで進んだ案件の渡し方を集めて、誰でも使える型にまとめます。
うまくいった渡し方が担当者の頭の中にだけあると、その人が異動したときに一緒に消えてしまうためです。
成果を上げている人に限って、自分のやり方を言葉にする時間がないのが現実です。
だからこそ、定例や見直しの場で集めた事例を、仕組みとして形に残す必要があります。
型にする手順は、次の4段階です。

①受注まで進んだ案件の、引き継ぎシートと会話の記録を集める
②集めた案件に共通する、聞き方や伝え方を探す
③共通点を、渡し方のマニュアルとして文章にまとめる
④マニュアルをもとにロールプレイを行い、全員が同じ動きをできるようにする

型が共有されると、新しく入ったISでも早い段階で質の高い案件を渡せます。
ただし型やマニュアルも、引き継ぎシートと同じように、状況に合わせて手を入れ続ける必要があります。

コツ⑤:引き継ぎシートを更新する

引き継ぎシートも一度作って終わりではなく、振り返りの結果に合わせて更新する対象です。
商材や売り方が変われば、FSが商談の前に知りたい情報も変わるためです。
せっかく作ったシートを変えることに、ためらいを感じる方もいます。
しかし古いままのシートを使い続けると、必要な情報が欠けたまま渡り、差し戻しは増える一方です。
更新のきっかけを決めておけば、思いつきではなく根拠を持ってシートを直せます。

更新のきっかけ

変える箇所

変えた後に確かめること

差し戻しが増えた

差し戻しの理由に多い項目

翌月の差し戻しの件数が減ったか

失注の理由に偏りがある

失注につながった点を、渡す前に聞く項目

同じ理由の失注が減ったか

商材や売り方が変わった

FSが商談の前に知りたい項目

FSが商談の冒頭で使えているか

シートを更新し続ければ、トスアップの手順そのものが、現場の変化に合わせて育ちます。
ここまでの内容を踏まえて、次はトスアップ営業でよく寄せられる疑問に答える番です。

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トスアップ営業に関するよくある質問

Q:会社でのトスアップとは?

会社でいうトスアップは、自分より適した人や部署へ、顧客や案件の対応を引き継ぐ動きを広く指します。
営業の現場だけでなく、部署をまたいだ引き継ぎでも使われる言葉です。
ただし社内での使われ方は会社によって違うため、新しい職場では意味を一度確かめておくと安心できます。
特に、上司への相談や報告とは区別して使われる点に注意が必要です。

・営業部門の間:ISからFS、FSからCSなど、担当の分かれ目で案件を渡す
・上司への相談との違い:判断を仰ぐのではなく、対応そのものを次の担当に任せる
・部署をまたぐ引き継ぎ:営業から技術担当など、専門の部署へ顧客の相談をつなぐ

どの使われ方でも、相手に同じ説明を繰り返させない渡し方が求められます。
上司への相談と混同しやすい言葉として、エスカレーションとの違いも押さえておきます。

Q:トスアップとエスカレーションの違いは?

トスアップは案件を前に進めるために渡す動きで、エスカレーションは自分では判断できない事態を上の立場へ上げる動きです。
どちらも誰かに引き継ぐ点は同じですが、目的と渡す相手が違います。
起きる場面も違い、トスアップは確度が上がったとき、エスカレーションはトラブルや例外が起きたときです。
2つを混同すると、本来は上司が判断すべきトラブルまで、次の工程の担当に押しつけてしまうおそれがあります。

比べる点

トスアップ

エスカレーション

目的

案件を受注に向けて前へ進める

自分では判断できない問題を解決する

渡す相手

次の工程を受け持つ担当や部署

上司や、決める権限を持つ立場の人

起きるタイミング

渡す条件を満たしたとき

トラブルや例外が起きたとき

2つを分けて考えれば、何を誰に渡すべきかで迷う場面が減ります。
トスアップの渡し手はISが中心ですが、ほかの担当が渡し手になる場面もあるのが実態です。

Q:トスアップはIS以外も行う?

IS以外の担当も、トスアップを行います。
マーケティング部門やFS、CSも、それぞれの分かれ目では案件を渡す側です。
ただし渡す場面ごとに、受け取る側が知りたい情報が違うため、気をつける点は少しずつ変わります。
どの場面でも、渡す条件と渡す情報を、渡す側と受ける側で先に決めておく点が共通の原則です。

・FSからCS:商談中に顧客と約束した内容を、もれなく書き残して渡す
・マーケティングからIS:反応の中身を添え、資料を見ただけの相手と区別して渡す
・CSからFS:追加の契約の相談は、顧客の利用状況を添えてFSへ戻す

渡し手が誰であっても、本記事で紹介した手順と振り返りの考え方は同じように使えます。
渡す仕組みを自社だけで整えるのが難しいときは、外部の力を借りるのも1つの手です。

トスアップ営業でお困りのことがあればスタジアムに無料で聞いてみよう!

渡す条件を決めても現場に定着せず、アポ数と受注のずれが埋まらないと悩む営業責任者は少なくありません。
ISとFSの分業が広がるほど、渡し方の質が受注を左右する場面は増えています。
しかし渡す条件づくりから振り返りの仕組みまで、社内の人手だけで回すのは簡単ではないのが実情です。
株式会社スタジアムは、IT・Web領域に特化した営業のプロ集団です。
商材ごとに専任の担当がつき、営業戦略の設計から実行まで一貫して支援します。
インサイドセールスとフィールドセールスの両方を支援しているため、トスアップの渡し方を両側から整えられます。
渡す条件の見直しや、引き継ぎシートの作り方に迷ったら、まずは現状をそのまま聞かせてください。
※具体的にサービス導入を検討していない方もお気軽に。

“現場を熟知した営業のプロ”に軽く壁打ちするだけでも、ヒントはきっと見つかるはずです。
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インサイドセールスの質を高めるインバウンド戦略 含めたい7つの要素・作り方・21の手順
AI×インサイドセールスで成果を出す15のポイント・従来の営業がうまくいかない7つの課題
15の特徴・インサイドセールスに向いている人の適性・未経験から成果を出す7つの手順
目的別15・インサイドセールスは将来性高い7つの理由・営業必須スキル完全版
目的別15選インサイドセールス効率化の成功法・7つの必須ツールと導入手順
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インサイドセールスとインバウンド営業13の違い・組織の営業力を最適化する7つの手順
インサイドセールス・トークスクリプト例文集・うまくいかない理由とアポ率を高める21のコツ
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【27選】アウトバウンドに強い電話代行会社を提供形態別に比較・選び方や料金相場も解説 
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例文29選・新規開拓の営業メールの書き方・件名・アポにつながるコツ完全ガイド 
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